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退職所得控除を2回使うには|退職金の後、iDeCoを何歳で受け取るか

読了 約10分
この記事の目次

40代で退職金を先に受け取ると、iDeCoの控除はもう食われて終わりなのか。私もそう思い込んでいました。でも、違いました。

カギは、iDeCoを「いつ受け取るか」を設計することです。退職金と受け取りの年を十分に空ければ、iDeCoの控除を別枠で使えます。掛けるのをやめる年と、受け取る年は、別に動かせるからです。

この記事は、退任47歳・iDeCo受給67歳というモデルケースで、手取りを実際の数字に置いてみます。

退職金を先に受け取った後、iDeCoの控除はもう使えないのか

私が最初につまずいたのが、ここでした。事業承継のとき、私は小規模企業共済を先に受け取ります。共済は税の上で退職金と同じ扱いです。すると退職所得控除は共済で先に使われ、後から受け取るiDeCoには枠が残らないのではないか——そう思い込んでいました。

不安は2つありました。「退職金を先にもらうと、iDeCoの控除はゼロになるのか」。そして「使えるとしても、何歳で受け取れば間に合うのか」。

調べて分かったのは、どちらも「受け取る年齢の設計しだい」だということです。退職金とiDeCoの受け取りを一定の年数だけ空ければ、iDeCoの控除を別枠で計算できます。退職金が先のときの目安は約20年。いわゆる19年ルールです。仕組みの中身は前の記事で図解したので、ここでは繰り返しません。

14年経営者の退職金設計:iDeCo一本+退職所得控除『2回使い』に辿り着いた

ふく郎

「退職金とiDeCo、それぞれで満額の退職所得控除を受けられないか」。そう考えて、受け取る年齢の組み方を調べました。

iDeCoには「拠出・運用指図・受給」の3つのフェーズがある

この記事の肝はここです。iDeCoは一つのかたまりに見えて、実は3つのフェーズに分かれています。掛金を出す時期、運用だけを続ける時期、受け取る時期——この3つです。だから、掛金を65歳でやめても、すぐ受け取らずに運用を続け、67歳で受け取る、という置き方ができます。

拠出フェーズ

掛金を出してiDeCoを積み立てている時期です。いまの制度では65歳になるまで掛けられます。2026年12月の改正で70歳までに延びる見込みですが、これは予定で、内容が変わる可能性もあります。本記事は現行の65歳までで試算します。

運用指図フェーズ

掛金を止めて、それまで積み上げた残高の運用だけを続ける時期です。この立場を「運用指図者」と呼びます。新しい掛金は入れませんが、どの商品で運用するかは指図できます。75歳まで続けられます。

受給フェーズ

積み上げたお金を受け取る時期です。60歳から75歳までの好きなときに、一時金でまとめてか、年金のように分けてか、選んで受け取れます。

3つのフェーズの年齢を並べると、こうなります。

フェーズできること年齢の目安
拠出掛金を出して積み立てる65歳になるまで(改正後は70歳までの予定)
運用指図掛金は止め、運用だけ続ける75歳まで
受給一時金や年金で受け取る60〜75歳の好きなとき

ここで腹に落ちたのは、掛けるのをやめる年齢と、受け取る年齢は別物だということです。65歳で掛け終えても、すぐ受け取る必要はありません。運用指図者として2年続け、67歳で受け取れます。

受け取りを後ろにずらせれば、退職金との間に20年の差を作れます。何歳まで掛けるかではなく、何歳で受け取るか。動かせるのは、そこでした。

iDeCoの3つのフェーズ(拠出・運用指図者・受給)を年齢帯で整理した図。拠出をやめる年齢と受け取る年齢は別であることを示す
iDeCoは「拠出・運用指図者・受給」の3フェーズが別々に動く。65歳で掛けるのをやめても、運用を続けて67歳で受け取る設計ができる。
ふく郎

「iDeCo=65歳で終わり」だと思い込んでいたのが、いちばんの勘違いでした。受け取りはもっと後ろに置けます。

退職金を先に受け取る場合、空けるべきは「約20年」(10年ではない)

ここは、前の記事を読んでくれた人に、いちばん誤解してほしくないところです。前の記事では「2026年の改正で10年に延びた」という話を書きました。これを読んで「じゃあ10年空ければいいんだ」と受け取ると、私のケースでは逆方向の理解になってしまいます。

ポイントは、退職金とiDeCoの「どちらを先に受け取るか」で必要な年数が違う、という点です。

改正で延びたのは「iDeCo先→退職金後」の方向

2026年の改正で年数が延びたのは、iDeCoの一時金を先に受け取り、その後に退職金を受け取る順番です。この方向は、以前は約5年空ければよかったものが、約10年に延びました。いわゆる10年ルールと呼ばれる方です。これは通称で、法令上の正式名称ではありません。

「退職金先→iDeCo後」は改正対象外

一方、退職金を先に受け取り、その後にiDeCoを受け取る順番は、今回の改正の対象外です。従来どおり、約20年を空ける必要があります。前年以前19年内に退職金を受け取っていると重複の調整に入るため、19年ルールと呼ばれます。これも通称で、実際の感覚としては約20年と思っておくのが安全です。

方向と必要年数の対応を、表にしておきます。

受け取る順番必要な空白期間通称
iDeCoが先 → 退職金が後約10年10年ルール
退職金が先 → iDeCoが後約20年19年ルール

私は共済を先に受け取る側なので、「退職金が先、iDeCoが後」の順番です。当てはまるのは、改正で延びた10年ではなく、従来どおりの約20年の方。ここを取り違えると設計全体が崩れるので、私は約20年を狙います。

19年ルール・10年ルールの仕組み(図解)はこちら

順番を間違えると、必要な年数が倍近くずれます。まず自分がどちらの順番かを確かめておくのが先決です。

退任47歳→受給67歳のモデルケースで、手取りを置いてみる

自分の出口がどうなるか、一つのモデルケースで数字を見てみます。

モデルの設定値

項目モデル設定値
退任・共済受取47歳・約1,000万円(モデル設定値)
共済加入年数25年(モデル設定値)
iDeCo開始35歳(モデル設定値)
iDeCo拠出35〜47歳 月23,000円/47〜65歳 月5,000円(加入者期間30年)
運用指図者65〜67歳
iDeCo受給67歳(47歳から20年差・セーフ)
運用利回り年7%(試算上の仮定・保証なし)

※「47歳から月5,000円」は最低額です。退任後も最低額で掛け続けるのは、加入者期間(=iDeCoの控除の対象年数)を伸ばすためです。ここで拠出をやめると加入者期間は12年で止まり、控除も小さくなります。詳しい意図は記事の後半で書きます。

共済側の手取り

まず共済から。加入年数を25年とすると、退職所得控除はおよそ1,150万円。受け取る共済が約1,000万円なら、控除の枠に収まり、課税される部分は出ません。

つまり共済側は、約1,000万円がそのまま手元に残ります。控除に収まった分は、まるごと非課税です。

iDeCo側の手取り

次にiDeCoです。少し段階を踏みます。

35歳から65歳まで掛け、その後67歳まで運用指図者として運用を続けたとします。年7%で回ると、67歳のiDeCo評価額はおよそ2,335万円。内訳は元本が約439万円、運用で増えた分が約1,896万円です。年7%は仮定で、実際は上にも下にも振れます。

iDeCoの控除は、掛けていた年数で決まります。掛けたのは35歳から65歳までの加入者期間30年。65〜67歳の運用指図者の2年は、ここに入りません。30年で計算すると、控除はおよそ1,500万円です。

ここからの計算を、表にまとめます。

項目概算
iDeCo評価額(67歳・年7%)約2,335万円
iDeCo退職所得控除(加入者期間30年)1,500万円
課税される退職所得約417万円
税合計約83万円
iDeCo手取り約2,252万円

課税される退職所得は、評価額から控除を引いた残りの半分です。(2,335万円−1,500万円)÷2で約417万円。これにかかる税が、所得税・住民税・復興特別所得税を合わせて約83万円(所得税約41万円・住民税約42万円・復興特別所得税約0.9万円)。差し引いて、iDeCoの手取りは約2,252万円です。

共済の約1,000万円と合わせると、総手取りは約3,251万円。退職金とiDeCoが、それぞれ別枠で控除を使えているのが、数字で見えてきます。

こうして数字にすると、20年ずらす価値がはっきりします。ただしこれはモデルの数字です。実際の控除額や税額は人それぞれなので、自分の数字での試算は税理士に頼むのが前提です。

退任47歳・iDeCo67歳受給のモデルケースで、共済とiDeCoの手取り内訳を整理した図。共済は全額非課税、iDeCoは控除1,500万円を別枠で使い、総手取り約3,251万円
モデルケースの手取り内訳(退任47歳・iDeCo67歳受給・年7%)。共済は全額非課税、iDeCoは控除1,500万円を別枠で使い、総手取りは約3,251万円という試算。

1年足りないとどうなるか――「20年後ちょうど」が安全ライン

ここで、見落とすと痛い注意点を一つ。「20年空ける」は、ぎりぎりで狙うと危ういラインです。1年でも足りないと、重複の調整に入り、iDeCo側の控除が削られます。セーフとアウトで、手取りに差が出ます。

退任年齢別の早見

退任した年齢から、何歳以降に受け取れば約20年を満たせるかを並べます。

退任年齢約20年後(受給の目安)受給上限75歳との関係
47歳67歳以降余裕がある
50歳70歳以降やや余裕は減る
55歳75歳ぎりぎりほぼ上限と重なる

iDeCoの受け取りは75歳が上限です。退任が遅いほど、約20年後が75歳の壁に近づきます。55歳退任だと約20年後は75歳ちょうどで、後ろにずらす余地がほとんど残りません。早く退くほど、選べる幅は広がります。

セーフとアウトで手取りはどれくらい違うか

控除の差だけを取り出してみます。運用益の影響を消すため、同じ評価額で、控除が満額のときと、重複調整で削られたときを並べます。

たとえば一般的な65歳で受け取ると、共済を受け取った47歳から18年。20年に2年足りないので、重複調整で控除が約480万円削られます。65歳時点の評価額2,040万円で、満額の場合と比べます。

控除が削られる(65歳・20年未満)控除が満額(20年以上)
退職所得控除約1,020万円1,500万円
課税される退職所得約510万円約270万円
税合計約112万円約45万円
手取り約1,928万円約1,995万円

同じ2,040万円を受け取るのに、控除が満額か削られるかだけで、手取りは約67万円変わります。1年でも足りなければ同じく調整に入り、受取額が大きいほど差は開きます(数十万円から200万円規模)。

「20年後ちょうど」を狙う設計は、退任が遅いほど選択肢が狭まります。私は47歳退任の想定なので67歳以降に置けますが、退任が10年遅ければ余白はかなり小さい。早く退く人ほど、この設計は効きます。

退職金から20年空ける、退任年齢別の早見図。退任47歳なら67歳以降、50歳なら70歳以降、55歳なら75歳ぎりぎりがiDeCo受取の安全ライン
退任年齢別の早見。「20年後ちょうど」が安全ライン。退任が遅いほど、受給上限75歳との余裕がなくなる。

65歳で拠出を終えた後、運用指図者として2年運用し、67歳で受け取る

最後に、最初の不安に戻ります。「いつ受け取れば間に合うのか」の回収です。

掛金を65歳でやめても、受け取りは67歳に置けます。その2年は運用指図者として、積み上げた残高の運用だけを続けて、受け取りを待ちます。

拠出終了後〜受給までを運用指図者でつなぐ

この2年を運用指図者で埋めることで、47歳で共済を受け取ってから20年後の67歳に、iDeCoの受け取りを合わせられます。受け取りの年齢を動かせる余白が、ここで効いてきます。

運用指図者期間は控除の年数に入らない

ただし、注意が一つあります。運用指図者でいる2年間は、iDeCoの退職所得控除の年数には入りません。控除に効くのは、あくまで掛けていた加入者期間です。だからこそ、掛けている間に年数を伸ばしておく意味があります。

だから私は、47歳から65歳までは月5,000円という最低額でiDeCoを掛け続けるつもりです。金額は最低でも、掛けているその月は加入者として年数に数えられます。受け取りまでの長い空白を、控除に効く形で年数として確保しておく——そのための置き方です。戦略として踏み込む部分なので、実行する前には税理士に一度確かめます。共済を満額から最低額に下げたときの実体験は、別の記事に書きました。

思考停止で満額にした小規模企業共済|出口の課税に10年気づかなかった

なお、運用指図者になると口座の手数料は下がります。細かいコストの話は、前の記事(月171円・月66円)に譲ります。

ふく郎

「掛けるのをやめる年」と「受け取る年」を分ける。これに気づけたのが、いちばん大きかったです。

ふく郎

ふく郎のまとめ

  • iDeCoは「拠出・運用指図・受給」の3フェーズが別々に動く。65歳で掛け終えても、67歳で受け取れる。
  • 退職金(共済)を先に受け取る順なら、空けるべきは約20年(19年ルール)。2026年改正で10年に延びたのは「iDeCo先→退職金後」の逆方向で、本ケースは対象外。
  • モデルケース(退任47歳・共済1,000万/iDeCo67歳受給)では、共済は全額非課税、iDeCoは控除1,500万を別枠で使い、総手取りは約3,251万円という試算になった(年7%・あくまで仮定)。
  • 「20年後ちょうど」が安全ライン。1年足りないと重複調整に入り、手取りが数十万〜200万円規模で変わり得る。退任が遅いほど受給上限75歳との余裕が減る。
  • 運用指図者の期間は控除年数に入らない。控除に効くのは掛けている加入者期間。最低額拠出の扱いは戦略の部分なので、実行前に税理士へ確認する。

本記事は2026年6月時点の制度に基づく、ふく郎個人の試算とモデルケースです。設定値(共済加入25年・iDeCo35歳開始・年7%利回りなど)はすべて試算用の仮の数字で、実在の数値ではありません。退職所得控除の重複調整・課税区分・控除額は、勤続年数・加入期間・受取額・受け取る順番で一人ひとり変わります。とくに最低額拠出と加入者期間の扱い、重複調整の差額は解釈に幅があります。実行前に必ず税理士・社労士へ自分の数字で試算を依頼してください。

参考

ふく郎
ふく郎

代々続く家業を継いだ40代半ばの現役経営者。近年中に事業を第三者へ譲り、FIREを目指す。 サラリーマンとは違う「経営者視点」のお金の話を、個人資産の実数値を公開しながら発信中。

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