数千万円を投じたソーシャルレンディングの失敗|助かったのは運だった
この記事の目次
株価が上がったり下がったり。その値動きに一喜一憂するのは、思いのほか疲れるものです。
それなら——日々の値動きがなく、年5〜10%の利息が決まって入ってくる投資があるとしたら。そう聞けば、心が傾きます。かつての私が、まさにそうでした。
ソーシャルレンディングという仕組みに、私は4社あわせて数千万円規模を投じました。結果を先に書きます。お金は、大きくは減っていません。それでも、これは私の深い「悔」の記録です。無事だったのは、判断が正しかったからではなく、ただ運が良かっただけ——いまは、そうはっきり分かるからです。
「安定」を求めて選んだ場所が、実は最も危うかった。その顛末を、自分の取引記録だけを頼りに正直に書きます。同じように高い利回りに惹かれている方の、立ち止まるきっかけになればと思います。
株の値動きが怖くて、私は「安定した利回り」に逃げた
ソーシャルレンディングとは、お金を借りたい会社と、貸して利息を得たい個人を、業者がつなぐ仕組みです。投資家はお金を貸し、見返りに利息を受け取ります。
当時の私は、個別株で大きな含み損を抱えていました。証券口座を開くたびに目に入る、真っ赤な数字。あの値動きの怖さから、逃げ出したかったのだと思います。
ソーシャルレンディングには、株価のような日々の値動きがありません。お金を貸せば、5〜10%ほどの利息が決まったように入ってくる。その「静かさ」と「安定」が、当時の私には何よりも魅力的に映りました。
とはいえ、不安がなかったわけではありません。会ったこともない会社に、自分のお金を貸す。当時まだ新しかったこの仕組みに、まとまったお金を預けてよいものか。冷静になれば、ためらいもありました。
その迷いを消してくれたのは、たった三文字でした。「SBI」です。
私が最初に選んだのは、SBIソーシャルレンディング。SBI——ネット証券で誰もが知る、あの大手金融グループです。その名前がサービスの頭についているだけで、得体の知れなかったソーシャルレンディングが、急に「きちんとした、安全なもの」に見えました。「あのSBIがやるのだから、まさか変なことにはならないだろう」。よく分からないものを、有名なブランドが保証してくれている——そう感じたのです。最初の一歩は、「SBI」という看板があったからこそ踏み出せました。
一度足を踏み入れると、投資先はどんどん広がりました。業界最大手のmaneo。伊藤忠商事が出資するクラウドクレジット。着実な実績をうたうクラウドバンク。気づけば計4社です。
選んだ理由は、どれも同じでした。「大きくて有名な名前」を安心の理由にして、私は数千万円規模のお金を預けていったのです。
そして、この「大きくて有名だから安心」という思い込みこそ、私が4社で思い知らされることになる、最大の落とし穴でした。
「SBI」という、たった三文字に救われた気がした——いま思えば、そのブランドへの過信こそが、最大のリスクでした。
4社に数千万円を預けて、何が起きたか
私が4社をどう見ていたか、そして実際に何が起きたかを、先に表でまとめます。
| サービス | 入口で感じた安心の理由 | 結果 | そこから学んだこと |
|---|---|---|---|
| maneo | 業界最大手 | 貸し倒れで約130万円の損失 | 「最大手」は安全を保証しない |
| SBIソーシャルレンディング | SBIグループ | 貸付先の不正に遭うも補填で結果プラス | 助かったのはグループの体力=運 |
| クラウドクレジット | 伊藤忠商事が出資 | 8年あずけて実質ゼロリターン | 時間という最大のコストを失った |
| クラウドバンク | 着実な運用実績 | 大きな問題なく回収できた | 無事だったのは実力ではなく運 |
ここから、各社で起きたことを順に書きます。
maneo:「最大手だから安心」が貸し倒れに
maneoは、当時のソーシャルレンディング業界で最大手とされた会社でした。「最大手なら、いちばん安全だろう」。そう考えて、メインの投資先にしていました。
2018年7月、maneoは関東財務局から業務改善命令を受けます。関連会社で集めた資金が、本来の使い道とは違うところへ流れていたことが原因でした。
正直に書きます。このニュースを見たとき、私は実感が薄かったのです。自分の案件はまだ問題なく動いていて、どこか人ごとでした。
ところが、その後です。自分が貸したお金の支払い遅延や、期限の利益喪失——期日通りに返ってこなくなる事態——が次々と起き始め、約130万円が貸し倒れで戻ってこなくなりました。
このとき感じたのは「やっぱり」ではなく、「まさか」でした。あれだけニュースになっていたのに、心のどこかで「自分のところは大丈夫」と思い込んでいた。その甘さを、損失で思い知らされました。
SBI:最も信用していた会社で、不正が起きた
SBIソーシャルレンディングは、4社の中で私が最も信用していた会社です。大手金融グループの名前があり、まさか問題など起きないと思っていました。
ところが2021年、その信用が揺らぎます。SBIソーシャルレンディングが集めて貸し付けたお金が、説明とは違う使われ方をしていたのです。貸付先をめぐる不正でした。SBIソーシャルレンディングはその責任を取り、ソーシャルレンディング事業からの撤退を決めました。
ここからが、この記事でいちばん書きたいことです。私の出資金は、無事でした。SBIホールディングスが投資家への補填を行い、結果として私の口座はプラスで終わったのです。
けれど、助かったのは私が賢かったからではありません。たまたまSBIという体力のあるグループの一員だったから、補填してもらえた。それだけのことです。同じ不正が、後ろ盾を持たない会社で起きていたら、私のお金は戻ってこなかったでしょう。
最も信用していた会社で不正が起きた。なのに損は出なかった。この矛盾が、私の見方を根本から変えました。
「損は出なかったから良かった」ではなく、「損が出なかったのは、ただの運だった」と気づいた瞬間でした。もし体力のないグループだったら、私のお金は戻らなかったはずです。
クラウドクレジット:8年かけて積み上げた利益が、最後に消えた
クラウドクレジットは、海外や新興国の案件を扱う会社でした。伊藤忠商事が出資しているという看板に、私は安心を感じていました。
不正があったわけでも、行政処分を受けたわけでもありません。最初の数年は、利息も順調に入っていました。問題は、終盤です。2025年の終わりごろから、貸し倒れによる損失が相次ぎました。ひとつの案件で50万円近い損失が出たこともあります。それまでコツコツ積み上げてきた利益は、その損失でほとんど食い尽くされました。
8年あずけて、最終的に手元に残ったのは、わずか+5.6万円。利益でも損失でもない、実質ゼロです。コツコツ積み上げて、最後にドカンとやられる。海外案件のリスクは、最後にまとめて牙をむきました。
8年という時間も、もう返ってきません。この「8年」が、後で書く最大の後悔につながります。
クラウドバンク:無事に回収できた。でも、それも運だった
クラウドバンクからは、私は無事に資金を回収できました。受け取った分配を含めれば、結果はプラスです。
「では、ここは成功では」と思われるかもしれません。けれど、そう書くわけにはいきません。
クラウドバンクを運営する会社は、過去に2回、行政処分を受けています。そして2026年初めの時点で、運用中のファンドの約3割が償還の遅延を抱えているといいます。
私が使っていた当時は、たまたま大きな問題が表面化しませんでした。だから資金を回収できた。それだけです。私の実力ではなく、タイミングの運でした。
なぜ「高利回りで安全」は、構造的にありえないのか
4社を経験して、私はようやく、シンプルな理屈に気づきました。
お金を借りる会社は、なぜソーシャルレンディングを使うのでしょうか。投資家に5〜10%の利息を払い、その上に業者の取り分も乗る。だから、借り手が実際に負担する金利はもっと高くなります。
まっとうな銀行がもっと低い金利で貸してくれるなら、わざわざそんな高い金利で借りる必要はありません。つまり、銀行が貸さなかった会社が、そこに集まりやすい。銀行が貸さないのは、それだけ返せなくなる危険があるからです。
そんな相手にお金を貸すのですから、本来これは高いリスクを背負う投資でした。私は「低リスク」のつもりで、実は最もリスクの高い場所にお金を置いていたのです。
これは私一人の思い込みではありません。ソーシャルレンディング業界では、2017年から2018年にかけて行政処分が相次ぎました。資金の使い道が不透明だったり、貸付先が偽られていたり。複数の会社で、似た問題が表面化したのです。
仕組みは違いますが、個人からお金を集めて高い利回りをうたう投資には、近年も注意が呼びかけられています。不動産の小口化商品「みんなで大家さん」は、ソーシャルレンディングとは別の仕組みですが、2024年6月に業務停止命令を受けました(2026年時点の情報です)。「個人から集める」「投資先が見えにくい」「高利回りで誘う」——この組み合わせには、共通の危うさがあると私は考えています。
お金は減らなかった。でも、私が本当に失ったもの
私はソーシャルレンディングで、お金を大きく失ったわけではありません。それでも後悔しているのは、別のものを失ったからです。
数千万円規模のお金を、私は何年もソーシャルレンディングに寝かせていました。クラウドクレジットに至っては8年です。その間に得られたのは、わずかなリターンでした。
もし同じお金を、同じ期間、低コストのインデックスファンドに積み立てていたら——金額は桁違いに増えていたはずです。失ったのはお金ではなく、時間と、その時間が生んだはずの複利でした。
税金の面でも、私は誤算をしました。株式の損失なら、株の利益などと相殺でき、相殺しきれない分を3年先まで繰り越せます。けれどソーシャルレンディングの分配金は雑所得にあたり、その仕組みが使えません。損は同じ年の雑所得の中でしか相殺できず、残った分はその年で切り捨てです(税の扱いは、税理士や税務署でご確認ください)。
それでも、この経験には意味がありました。最も信用していたSBIで不正が起きた一件をきっかけに、私は投資というものを初めて真剣に学び始めました。そしてたどり着いたのが、低コストのインデックスファンド——オルカンやS&P500です。投資に十分な時間をかけられない経営者にとって、それが私なりの答えでした。
ソーシャルレンディングを含めた14年の遍歴の全体像は、親記事にまとめています。
14年で約700万円失った経営者が、たどり着いた『王道』はインデックスだった
お金を失わなくても、時間は失う——これがソーシャルレンディングで私が払った、本当の授業料です。
まとめ
ふく郎のまとめ
- 株の値動きが怖くて「安定した利回り」を求め、ソーシャルレンディング4社に数千万円規模を投じた。各社それぞれに「安心の理由」があると信じていた。
- 結果はばらばらだった。maneoは貸し倒れで約130万円の損失。SBIは不正に遭ったが補填でプラス。クラウドクレジットは8年で実質ゼロ。クラウドバンクは無事に回収できた。
- お金が大きく減らなかったのは、私の判断ではなく運だった。SBIで助かったのは、たまたま体力のあるグループだったから。他社なら、こうはいかなかった。
- 「高利回りで安全」は、構造的に成り立ちにくい。私は低リスクのつもりで、最もリスクの高い場所にお金を置いていた。
- 本当に失ったのは、お金ではなく時間だった。数千万円を何年も寝かせ、複利で増えたはずの分を取り逃した。
本記事は2026年5月時点での、私個人の体験の記録です。特定のサービスや投資手法をすすめるものでも、否定するものでもありません。各社の状況や制度は変わることがあります。投資の判断はご自身の責任で、最新の情報を金融庁などの公式の情報源で確認したうえで行ってください。税の取り扱いについては、税理士や税務署にご確認ください。
代々続く家業を継いだ40代半ばの現役経営者。近年中に事業を第三者へ譲り、FIREを目指す。 サラリーマンとは違う「経営者視点」のお金の話を、個人資産の実数値を公開しながら発信中。
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